震災復興における「食と観光」への期待
東日本大震災から11年半が経過した2022年の夏、6年ぶりに宮城県石巻市から岩手県釜石市までの三陸地域を訪問しました。そこには、着実に復興してきた地域の姿と、変わらぬ食の恵みの景色が広がっていました。
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立命館大学食マネジメント学部 教授
高田 剛司(たかだ たけし)
専門は、観光まちづくり、地域・産業振興。自治体の調査・計画づくりに携わるほか、商店街等で地域の人々によるプロジェクトのコーディネーターとして活動。現在は、学生と一緒に伊勢や丸亀などでフィールドワークを展開。訪問先で、その土地の食材を使った料理を食べることが何よりの楽しみ。好きな食べものは、うなぎ。
観光を牽引する三陸のガストロノミー
震災から5年後の2016年、内閣府「新しい東北」事業のひとつとして「三陸地域のフードツーリズムを関西から」という目的で、地域の魅力発信やプロモーション活動に取り組みました。それから6年。
本来は節目である10年後の2021年に再訪する予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、訪問の機会が奪われました。2021年は、JRによる東北ディスティネーションキャンペーン、NHK朝の連続テレビ小説「おかえりモネ」の放映もあり、再び三陸が注目された年でしたが、全国的に旅行自粛ムードが広がってしまいました。
2022年になり、ようやく都道府県を越えた旅行の動きが再開し、6年ぶりに訪問した三陸は、土地の嵩上げや道路などインフラの復旧・復興事業が概ね終わり、国の復興祈念公園も開設されていました。人口減少社会に突入した日本では、特に地方での復興はこれまで以上に困難なことが予想されます。今後も定住人口の増加が見込めない中で、どのようなまちづくりを進めていったらよいのでしょうか。今まで以上に、交流人口を増やす「観光」の役割が欠かせません。そして、その観光を牽引する大きなコンテンツは「食」です。
震災復興には、この10年間で多くのボランティアや工事関係者が三陸を訪れました。三陸の美味しい食を知っている人たちに、再び観光で三陸を訪れてもらう。そのような関係人口づくりも一層重要になります。
陸前高田市には、地元に根付く発酵食を集めた新しい商業施設がオープンし、南三陸町では新たなぶどう畑とワイナリーが整備され、牡蠣とのマリアージュを体験できる試みが始まっています。石巻市の中心市街地ではリノベーションした建物にクラフトビールの醸造所が開設され、釜石市ではボランティアの活動拠点であったカフェを中心に特産品づくりが進んでいました。各地で三陸の「食」の魅力を充実させる取組みが芽吹いています。
「食」は人々を笑顔にし、新たなコミュニケーションを引き出します。本格的な復興を進める三陸のガストロノミーにこれからも目が離せません。防災学習も兼ねて、五感で三陸の食文化を体験しに出掛けてみませんか。
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