学生の共食の実態から見たアフターコロナの変化と食
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立命館大学食マネジメント学部 教授
小沢 道紀(おざわ みちのり)
専門は、マネジメント、マーケティングなど経営学。学生が主体で活躍する様々な外部と連携したプロジェクトを実施。また、キャンパスのある草津市との連携など、自治体との連携も実施。珍しい食べ物は、見かけると食べてみることが多い。好きな食べ物は、美味しければ何でも好き、という事で特にこだわりはない。
2020年2月から続いたコロナに関わる自粛も、2023年5月に、感染症法上の分類が変更になることによって、終わりとなりました。思い起こせば、Stay Homeや3密を避ける、など他人との直接の接触を避ける約3年間でした。
この間、今まで経験したことがなかったような行動が求められてきました。外出する時はマスクを着けることや、施設等に入る時には手指消毒をすること、食事場所ではパーティションを使うこと、食べる時には喋らない黙食すること、などです。特に教育現場では、昼食時には、全員が同じ方向を向いて話をせずに食べること、が徹底されてきました。
このような行動も変化しつつありますが、まだ時間がかかると思われます。そしてまた、世界中の人や貨物の移動が活発になっている中で、感染しやすい疾病が、いつ世界中に蔓延するのか、という状態にあります。もし蔓延すれば、そのリスクに応じて、再度似た行動が求められるかもしれません。
私自身は大学の教員として、大学生といつも接していますが、この3年間での学生の変化について、いくつか体感していることがあります。
2023年6月時点でのマスクの着用ですが、3月に個人の判断にゆだねられつつ、まだ多くの学生がマスクをしています。学生に話を聞いていると、それなりの数の学生にとって、このコロナ禍の間に、少なくとも現段階では、素顔を見せる行為が親しさを表す意味を持つようになったようです。実際に、ゼミなどの小集団では、親しくなってくると、暑くなってきているからかもしれませんが、マスクを外す学生が多くなります。また、学生間に距離感のあるクラスだと、マスクを着け続ける学生が多くなります。
そしてコロナ禍では、懇親会の機会が極端に少なくなりました。ゼミやサークルでの懇親会は自粛をするようになり、卒業するまでの間に、団体での懇親会に参加した経験がない学生もいます。そしてサークルなどの団体では、懇親会を経験したことがない学生が中心メンバーとなっています。そのため、コロナ禍以前のように共食をすることによって親しくなって、団体の運営をよりスムーズに行う、という状況になるかどうかは、まだわかりません。
また、黙食を徹底してきた経験によって、共食の場でも、会話をしてコミュニケーションを図るというよりも、まず食べなきゃ、として静かに食べる学生も少なくありません。とりあえず食べていれば、あまり親しくない人と意識して会話をする必要がない、という事かもしれませんが、懇親会で静かな空間が続くのが不思議な感じもします。
このようなコロナ禍での学生の変化も、やがてゆっくりとコロナ禍前の姿に戻っていく、と考えられます。食に関わる産業でも、コロナ禍によって、フードデリバリーの進展や食材の宅配の成長、その一方で飲食店、特に夜間営業を中心とした飲食店の営業不振などがありました。アフターコロナの中で、飲食店では、深夜帯での営業こそ、現状ではまだ戻り切っていませんが、他の時間帯については戻りつつあります。
そして、先に書いた学生、Z世代と言われるような世代は、懇親会などへの参加をしたがらない、とよく言われます。しかし、接している中で見ている学生たちは、共食する機会があまりなかったこともあり、そういう場で、どうふるまえば良いのかわからないし、意識的に振る舞うのも大変だから参加しない、というように感じられます。一方で、自分からはあえて声を上げないけれど、親しくなりたい人と共食する機会があるのであれば、絶対に参加したい、という思いも持っているようです。
このようにコロナ禍によって、共食に対する意識や行動が変化してきましたが、アフターコロナの現在、改めて共食について捉えなおしていく必要もあるのではないでしょうか。
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