グローバル企業の戦略を読み解く
グローバル企業の戦略には、2つあります。1つ目は、世界標準型で本社の意向が強く、世界統一的なビジネスを展開する戦略。2つ目は現地適合型で、現地法人の独自性が強く、国ごとで現地に合わせた戦略です。これらを共通化戦略 対 カスタマイズ戦略と呼ぶこともあります。今回は、コカ・コーラをはじめ、トヨタ、グーグル、マクドナルドなど著名なグローバル企業が、国ごとの相違をどのようにビジネスに組み上げて成功に導くかについて、その戦略を読み解く1冊を紹介します。
グローバル企業に見る、経済的な国境線
『コークの味は国ごとに違うべきか』著・パンカジ・ゲマワット、訳・望月衛(文藝春秋、2009年)
例えば、「爽健美茶」や「アクエリアス」は多くの人が知っています。これらはコカ・コーラの日本法人である日本コカ・コーラ社が販売しているものです。日本人は、コカ・コーラの本社のあるアメリカ人ほどコーラは飲みません。爽健美茶やアクエリアスは日本独自の商品で、日本ではカスタマイズ戦略を取り成功しています。この結果、日本コカ・コーラ社は日本随一の清涼飲料業界メーカーとなっています。
一方、カスタマイズ戦略が現地の事情に合わせて優位であるかというと、デメリットもあります。共通化戦略では、国ごとの製品開発費や独自戦略を練る必要がないため、コスト的には有利です。さらにアイデンティティの問題があります。どこかに軸がないとブランドの確立に失敗します。日本で成功しているイケアは日本仕様の商品を販売しているものの、「北欧の家具」というブランドを戦略的に維持しています。Appleは創業以来、共通化戦略を取り、国ごとで製品を変更することはなく、すべてカリフォルニアの本社で決めています。
企業は、国を超えても同じ取り組みをする共通化戦略を取りたいのが一般的であり、そのほうが成功しやすいといえます。このようなことから、グローバル企業といえども、その企業が発祥した国の歴史や文化、それらを反映した法体系・制度・商慣習が似ている国において成功を収めていることが多いです。
グローバル化によって国境のもつ経済的意味は減少しているものの、グローバル企業の展開を見ると、まだまだ経済的な国境線は存在しているため、異文化理解は重要であるといえます。本書は、身近にある他のグローバル企業、例えばネスレ、味の素、キッコーマン、ZARA、ユニクロ、サムスン、日産などを、このような視点で見るきっかけにもなるでしょう。
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