「水」と「食」の未来を読み解く
2015年、ダボス会議で知られる世界経済フォーラムは、「潜在的な影響が最も大きいと懸念されるグローバルリスクは水危機である」と発表しました。食の生産になくてはならない水の問題が、地球規模で拡大しつつあることが懸念されています。世界の水について何が問題となっているのか。水から食とエネルギー、さらには社会・経済・環境の持続可能な未来を考えさせられる一冊を紹介します。
水から見た食の安全保障と持続可能な未来
『水の未来-グローバルリスクと日本』著・沖 大幹(岩波新書、2016年)
『水の未来-グローバルリスクと日本』では、世界各国の専門家が食料生産のために消費される水の量を試算しています。その結果を見てみると、じゃがいも生産1kgあたり100~200リットルの水消費に対して、小麦1kgあたりでは1000~2000リットル、牛肉1kgあたりではなんと15000~20000リットルと、驚くべき水消費量に私たちの食消費が支えられていることがわかります。
牛肉の場合、牛を育てるために餌として必要な飼料穀物を生産するための水消費量の多さが影響しています。水が足りない地域に大量の水を運んで食料を生産するよりも、水が豊富な地域で生産された食料を水が足りない地域に運ぶ方が経済的に合理的であることから、地球規模での人口増大に伴って世界各国間の食料貿易が盛んになってきているのです。
日本は世界の中でも水資源に恵まれた地域である(水が足りない地域ではない!)にもかかわらず、熱量換算(カロリーベース)で見ると、国内食料消費のおよそ6割を海外から輸入しています。2050年頃に90億人を超えると想定されている世界人口の食を支えるための水は足りるのでしょうか?
食の安全保障については、人為的な気候変動による影響も懸念されています。水の問題も、食料やエネルギーの問題と関連させて考えるべきだという風潮は、世界的に広がりつつあります。持続可能な未来を見据え、水、食、エネルギーの複合問題を一体的にマネジメントしていく取り組みが重要であることを認識せざるを得ません。
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